東京都小金井市の都立小金井公園内にある「江戸東京たてもの園」は、江戸時代から昭和中期までの貴重な建物を移築・保存する野外博物館です。園内を巡れば、まるで時を遡ったかのような体験ができます。
このたてもの園が注目を集める理由の一つが、スタジオジブリ映画『千と千尋の神隠し』の舞台のインスピレーションの源として言及されることにあります。
本記事では、スタジオジブリが公式に作画の参考にした建物を中心に、映画の世界観を形作ったと思われる見どころをご紹介します。
1.釜爺のボイラー室のモデルとなった建物
園内で、スタジオジブリが公式に作画の参考にした、唯一のスポットです。
武居三省堂(たけいさんしょうどう)
時代:昭和初期(1927年)
構造:木造三階建
場所:東ゾーン 下町中通り
旧所在地:千代田区神田須田町
見どころ:壁一面を埋め尽くす職人の工夫
この建物の最大の魅力は、店内の壁面から天井近くまでびっしりと並べられた桐箱の引き出しです。
これは、文具店として筆などの書道用品を種類ごとに大量に収納するために、限られたスペースを有効活用した造りです。この圧倒的な数の引き出しが、映画の中で、釜爺が長い手足を伸ばし、薬札を出し入れするボイラー室の巨大な薬棚のモデルになったとされています。
宮﨑駿監督自身もたびたび訪れ、この部屋の雰囲気を非常に気に入っていたことが知られており、作画資料として参考にされました。
2. 湯屋や下町の雰囲気を伝える代表的な建物
ここからは、映画の直接的なモデルではありませんが、映画の世界観(異世界感やレトロ感)と共通する魅力を持つ、当時の東京を代表する建物をご紹介します。
子宝湯(こだからゆ)
時代:昭和初期(1929年)
構造:木造および鉄筋コンクリート造一階建
場所:東ゾーン 下町中通り
旧所在地:足立区千住元町
見どころ:東京の銭湯文化の粋を集めた宮造り
子宝湯は、関東大震災後の復興期に建てられた、東京の銭湯建築の特徴を色濃く残す豪壮な「宮造り(みやづくり)」の建物です。
唐破風(からはふ): 寺社仏閣を思わせるような、豪華で威厳のある屋根の造り。
折上格天井(おりあげごうてんじょう):木材を格子状に組み合わせた格天井の四隅を弧状に立ち上げ、一段高くしたものを折上格天井といい、高い格式を表しています。
富士山のペンキ絵: 浴室には、銭湯文化の特徴である雄大な富士山のペンキ絵が描かれています。
鍵屋(居酒屋)と下町中通り
映画の冒頭、千尋の両親が豚になってしまう前に足を踏み入れた街並みを彷彿とさせるのが、東ゾーンに広がる「下町中通り」の風景です。
居酒屋「鍵屋」や看板建築の「丸二商店」など、レトロな商店が並ぶ風景は、日常から一歩踏み出した異世界的な雰囲気を持っています。
都電7500形
園内、東の広場に展示されている、かつて東京の街を走っていた路面電車です。
映画後半で千尋が乗り込む、海の上を走るノスタルジックな車両のイメージを持つ方も多く、実際に中に入って、昭和レトロな座席や運転席を見学できます。
JR中央線「武蔵小金井駅」「東小金井駅」、西武新宿線「花小金井駅」からバスを利用するのが便利です。
詳細は公式サイトをご覧ください。
公式に作画の参考にされたのは、東ゾーンにある文具店「武居三省堂」です。特に店内の壁一面の引き出しが、釜爺のボイラー室のモデルとなったとされています。
入園後すぐに東ゾーンへ向かい、「武居三省堂」→「子宝湯」→「都電」と巡り、その後時間に余裕があれば西ゾーンの洋風建築などへ進むのが効率的です。 東ゾーンのみの見学であれば、1.5時間~2時間程度が目安です。
園内には、食事や休憩ができる施設があります。 •デ・ラランデ邸内のカフェ「武蔵野茶房」: 西ゾーンにある明治時代の洋館内で、洋食や軽食、甘味などを楽しめます。 •東ゾーンの食事処: 休憩棟の2階に武蔵野うどんなどが食べられる「たべもの処蔵」があります。
開園時間は季節によって異なります。 開園時間: 4月~9月 9:30~17:30 10月~3月 9:30~16:30 休園日:毎週月曜日(祝休日の場合は翌平日)、年末年始 詳細は公式サイトでご確認ください。
江戸東京たてもの園は、『千と千尋の神隠し』の釜爺のボイラー室のモデルとなった「武居三省堂」をはじめ、江戸から東京の風景や文化を感じられる貴重な建物が集まっています。ぜひこの「聖地」を訪れ、映画の世界観と歴史が融合したタイムスリップ体験をお楽しみください。
この記事は、小金井市をはじめ多摩地域全体の観光情報を発信する、多摩観光推進協議会が運営する「Another TOKYO TAMA」編集部がお届けしました。
江戸東京たてもの園公式サイト
https://www.tatemonoen.jp/
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