【特別編】 古民家リノベーションカフェ&ヴィラ/あきる野市「POUND」&「紡舎」
暮らすように過ごす古民家リノベーションのカフェとヴィラ
今回は、「特別編」として、あきる野市戸倉にある昭和13年に建てられた、築85年の古民家リノベーションカフェ「POUND(パウンド)」をご紹介する。この店は、「古民家カフェ」の特集や書籍などにも度々登場し、その雰囲気がカフェ好きの間では「隠れ家」のような存在として知られている。
オーナーがほぼDIYでリノベーションした「ゆったりした内装」に、手入れされた「グリーン」、そして「アンティークな家具や小物」がセンスよく配置され、どの席に座ってもリラックスした時間が過ごせるのが人気の理由だ。
なぜこの店を「特別編」としてご紹介するかというと、ひとつは、訪れる人を自然とくつろがせてくれる、心地よい空間づくりのセンスにある。そしてこのカフェが立地や周囲の環境と相まって、「ここを目指して出かけたい」と思わせる、旅の目的地のひとつになっていることが2つ目の理由だ。
「食」をめぐる取り組みのひとつに、「フードツーリズム」という考え方がある。「POUND」は「カフェ」というジャンルにありながら、その在り方や積み重ねてきた時間の中で「フードツーリズム」として語られる要素や可能性をすでにいくつか実現している。
その土地へ訪れ時間をすごすカフェ
引き戸を開いて店内に入ると、土間になっている広めの玄関で靴を脱ぎフロアに上がる。天井が高く、ゆったりと過ごせる店内の各所にソファ席やテーブル席、目の前に山の景色が眺められるカウンター席など、タイプの違う居場所がバランスよく配置している。
白を基調とした、木の温もり感じる店内。アンティークな家具や小物が配置され、窓から差し込むやわらかな光と、庭や店内に飾られたグリーンが優しく癒してくれる。この空間が多くのお客を惹き付けている。
オーナーの岩田衣織(いわたいおり)さんが、コーヒーと接客を担当し、奥様が料理や焼き菓子を作る。二人はとも料理人ではない。自分たちが食べ歩いて経験した、自分たちが納得する美味しさを提供することにこだわっている。
ふたりは「旅」をテーマにするライターで、奥様の玲子さんは、中国や台湾、香港をはじめ、世界各地で食や暮らしを取材し、現地の文化や味に触れてきた。岩田さんは30歳の時に、二人で中国・浙江省杭州市にある大学へ留学。卒業後も上海に留まり、現地では、ライターの経験をかして、日本人向けフリーペーパーや、グルメ誌を発行する出版社で編集長を務め、中国語を使いながら取材・編集業務を担当してきた。
当時の上海には20世紀初頭の洋館や、煉瓦造りの古い集合住宅をリノベーションしたカフェやバーが流行っていて、そこは歴史と現代的な感性が融合した空間。また東洋と西洋が混ざり合う独特のカルチャーにとても惹かれたという。「POUND」にはそんな経験と思いがつまっている。
カフェで提供するメニューは、中国・上海のカフェやレストランをはじめ取材先で出会った「食」を通じて、「本当に美味しいと思えるもの」を自分たちなりの基準で判断したものを提供。この地の「素材」や「食べ物」を使って、「この場所で体験してもらえるものをお客様に届けたい」という思いがつまっている。
岩田さん夫妻の「理想のカフェ」は、空間やインテリアに加えて、そこに集う人も含め、はじめて完成する。ここで心地よく過ごせる最大限かつさりげない空間づくり、そしてゆるやかな時間が流れる場所。それがご夫妻の「理想のカフェ」であり、それが支持されている。
森の中の一棟貸しヴィラ「紡舎」で暮らすように泊まる
「POUND」のあるあきる野市は、夏は秋川渓谷へのレジャーや観光地。自然があり、空気がよく、心もほどける気分をもっと楽しんで欲しいと、2025年5月には、店から車で15分ぐらいの地に、一日一組限定の一棟貸しヴィラ「紡舎」も開業した。
武蔵五日市駅の北側、深沢というエリアの最奥、明治初期に「五日市憲法草案」が発見された深沢家屋敷跡や、東土蔵の前に建つ古民家と出合い、今度もまた自分たちでリノベーションした。今回は大きな梁と土間を生かしながら、和モダンかつ北欧スタイルを取り入れ、山奥に佇む古民家でありながら、都会的な洗練を感じさせる空間とした。
開放的なリビングの中央に置かれたテーブルをやさしく照らすのは、日本人建築家・伊東豊雄氏によるデザイン。繭のようなフォルムが印象的な照明〈MAYUHANA〉。部屋の随所には国内外のアンティーク家具や小物が配置。
さらに部屋を仕切るパーテーションやカーテンといったファブリックには、あきる野市の「真木テキスタイルスタジオ」による天然素材の手織り布を使い「特別気持ちのいい体験」ができる空間を生み出した。
キッチンも完備され、基本は自炊スタイルだが、地元ベーカリーのパン、平飼い卵、顔の見える農家の野菜、地元のソーセージ、東京和牛に東京X、鮎など、あきる野市周辺の「美味しい」食材付きの朝食・夕食用プランも用意する。庭でバーベキュースタイルで楽しむことが可能だ。
またオプションで、地元農家や精肉店、酒蔵を巡り、食材を集めて夕食をつくる体験型の「ガストロノミーツアー」もオーダー可能。地域の文化や人にふれあいながら「食」と「旅」を同時に楽しめるツアーも用意する。さらに宿泊客へは近隣の提携レストランへ送迎するサービスも行っている、
宿泊費は、1棟6人まで利用可能で6万円(税別)〜。オープンして約半年だが、すでにカップルやファミリーはもちろん、最近では海外からの旅行者も訪れている。テレビやCMの撮影でも使われる宿となっている。
ここを取材してみて、多摩エリアの「フードツーリズム」の可能性が大いにあると感じた。いや、すでにもう始まっているのかもしれない。
| 施設名 | POUND (パウンド) |
|---|---|
| 住所 | 東京都あきる野市戸倉208−2 |
| TEL | 042−588−5797 |
| 営業時間 | 平日 11:30〜16:30 土・日曜日 11:30〜18:00 |
| 休業日 | 火・水・木(祝日の場合も休み) *ラストオーダーは閉店時間の1時間前(早じまいの場合もあり) |
| ホームページ | |
| SNS | |
| 施設名 | 紡舎(ぼうしゃ) |
| 住所 | 東京都あきる野市深沢520 |
| TEL | 090-2004-3249 |
| ホームページ |
