「東京発」のクラフトジン/八王子市 「東京八王子蒸溜所」
ものづくりの技と感性が息づくクラフトジンを生み出す 「東京八王子蒸溜所」
美味しい料理にはおいしいお酒が欠かせない。美味しいお酒があれば料理もより美味しく楽しめる。美食家にとって「お酒」は「食」を愉しむうえで欠かせないパートナーだ。「お酒」づくりに多摩エリアで情熱を燃やすメーカーや人々を紹介するシリーズ、今回は八王子の「クラフトジン」のメーカー「東京八王子蒸溜所」を紹介する。
住宅の窓枠やガラスを固定するための樹脂材(グレイジングチャンネル)など建築資材の製造を行う創業75年の「大信工業株式会社」のこの事業は、中澤眞太郎社長のある衝撃的な出会いから始まった。札幌営業所へ出張した際、函館のバーで「飲める香水」と称されるパリの蒸溜所が製造したクラフトジン「BEL AIR(ベル エール)」に出会う。「お酒を味ではなく香りで楽しむ」という感覚をはじめて体験して衝撃を受けた。
祖父の代から続く会社では、新規事業の開発を考えていた。「ジンの製造工程が工業的だ」と聞くと直観もひらめいた。ワインはブドウの栽培から始めなければならない。日本酒は発酵や麹づくりなど、杜氏のような熟練の職人技が必要。しかし、ジンは、とうもろこしやライ麦などの穀物を原料とした「グレーンスピリッツ」に、ジュニパーベリーやコリアンダーシードなどの「ボタニカル(草根木皮)」を加えて造られる。微生物を扱わないため、工業的なアプローチが可能。製造業の新規事業としてはあり得るではないか。これが原点となった。
2019年にジンの製造から販売までを学ぶため、アメリカ・シカゴの蒸溜所で研修を受けた。「どんなジンをつくりたいか」の整理もついた。日本ではクラフトジンに注目が集まり、個性豊かなご当地ジンのようなものが多いが、中澤さんが目指すのは、「王道の『ロンドン ドライジン』から離れすぎず、カクテルのベースとして使いやすく、邪魔にならず、奥行きを与え、長く使い続けてもらえるもの」。そこから市場調査、販売計画を精査しながら自社工場の一角にガラス張りのスタイリッシュな蒸溜所を建設。2022年1月に、トーキョーハチオウジジン 「CLASSIC(クラシック)」と、「ELDER FLOWER(エルダーフラワー)」の2種類のジンをリリースした。
その2つのジンは、その年5月に行われた「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2020」の洋酒部門で金賞と銀賞を受賞する。「ボタニカル同士が響き合い、重なり合うことで、複雑さと奥深さを生み出している」と評価された。
実は中澤さんにはもう1つ音楽家としての顔がある。製造業に長く携わり、ロジックな思考で社長を務める一方、中学時代からトロンボーンをはじめ、今でも年3回ほどオーケストラの演奏会を主催。音の重なりにこだわりリードする音楽家。この2つの感性を持つ中澤さんだからこそ、ボタニカル同士が響き合う複雑な香りの重なり合う独自のハーモニーを生み出せたのかもしれない。
中澤さんは「食中酒」という飲み方も提案する。ジンのようなスピリッツ(蒸留酒)は、アルコール度数が高く、ドライな口当たりが特徴。華やかな香りにもかかわらず飲み口はキリッとしているため、味の補足として少し甘みが欲しくなる。そこでほのかな苦味と甘みのトニックウォーターを加え「ジントニック」として飲まれることが多いが、それは「食前酒」向き。また、マティーニや、ギムレットなどジンを使ったのショートカクテルは「食後酒」向きになる。
そこでジンをトニックウォーターとソーダの半々で割る「ジンソニック」という飲み方を提案する。華やかな香りに深みを与えながらも、すっきりとした後味で食事の邪魔をしない程度の甘さが「食中酒」に向いているという。
蒸溜所の2階にはテイスティング専用の「バーカウンター」が併設。不定期で「蒸溜所ツアー」を開催するほか、ここでは都心や近隣のバーテンダーと常に交流し、スピリッツカルチャーの普及と新たな味わいを求めて研究に取り組んでいる。中澤さんが発信する「東京発」のスタンダードなドライジンが、日本と世界でファンを獲得する未来は十分にあり得るかもしれない。
| 施設名 | 東京八王子蒸留所 |
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| 住所 | 東京都八王子市椚田町1213-5 |
| 公式サイト | |
| インスタ | |
| 日程・予約ページ | ■蒸溜所ツアーは不定期開催かつ予約制。日程・ご予約は下記URLを参照ください。 |
